防弾装置装備個所まとめ

艦型ごとで見る防弾装置装備個所まとめ
「各艦の防弾装置装備個所」で記載している各艦の防弾装置の装着個所を表1にて、艦型ごとにまとめてみます。

艦名防弾装置装着個所
峯風型羅針艦橋
神風型羅針艦橋
睦月型羅針艦橋、指揮所、舷側、砲座、機銃台
特型羅針艦橋、機銃台
初春型羅針艦橋、舷側、機銃台、軽質油庫
白露型羅針艦橋、指揮所、機銃台、軽質油庫
朝潮型羅針艦橋
樅型羅針艦橋、舷側、砲座、機銃台
若竹型羅針艦橋、機銃台
表1

同型艦でも防弾装置の装備個所が異なる場合がありますが、表1でまとめた範囲内での装備に留まるのではと考えています。
よって、防弾板の装着のみが確認できていて、装着場所が不明な艦も、この表からある程度装着場所が絞られてくるのではないかと考えます。
なお、航泊日誌内では「艦橋」と記載していても、文中で羅針艦橋とするのは、より具体的に装着場所を示すためで、駆逐艦では羅針艦橋にしか装着が確認できていないため、そのように表記しています。

各艦型の防弾装置装備個所の基本パターン(更新中)
防弾板の装着指示としては、事変日誌以外に初春型の「防弾装置新設図」があります。
その史料では、防弾装置の装着個所が指定されており、その装着個所が正しいことは写真でも確認できていますが、初春型と同様に、他の艦型でも防弾装置の装着個所はある程度決まっているのではと考えています。
そこで、各艦の防弾装置装着状況をまとめてきた集大成として、各艦の装着状況を鑑みながら、表1を基に艦型ごとの基本的な防弾板の装着個所を以下に整理しようと思います。

・峯風型:羅針艦橋


・神風型:羅針艦橋


・睦月型:羅針艦橋、指揮所、砲台、舷側、機銃台


・特型:羅針艦橋、機銃台


・初春型:羅針艦橋、舷側、軽質油庫、機銃台
 ※舷側は防弾装置新設図では艦首のため、基本艦首に装備
 ※一水戦事変日誌では羅針艦橋、機銃台、軽質油庫の3か所で、防弾装置新設図では、羅針艦橋、機銃台、舷側(艦首)となっている


・白露型:羅針艦橋、機銃台、軽質油庫
 ※一水戦の事変日誌で、羅針艦橋、機銃台、軽質油庫の3か所への装備が指示されており、実際の装備例を見ても上記3か所への装備が確認できる
 ※指揮所に装備しているのは五月雨のみで、装備個所としては他の艦型でも確認できており、珍しくはないが、先述の通り、一水戦の事変日誌の内容や、確認例が五月雨のみということから、個艦の揺らぎと考えられる。


・朝潮型:羅針艦橋


・樅型:羅針艦橋、機銃台、砲台、舷側
 └栗、栂、蓮:砲台、舷側、機銃台
 └その他(14駆、15駆):羅針艦橋


・若竹型:羅針艦橋、機銃台

防弾板の装着方法

支那事変中に多くの艦艇に装着された防弾板ですが、その装着方法は大きく2つあります。

1つ目は引っ掛ける方法です。この方法は初春型の「防弾装置新設図」という史料に記載されている方法で、防弾板の裏についているフックのようなものを羅針艦橋の場合にはジャッキステーに、機銃座や上部甲板上の場合には手摺りに引っ掛けます。

2つ目の方法は、羅針艦橋にジャッキステーが無く、1つ目の方法で装着できない場合に使われます。この方法は、防弾板の上部両端に空いた穴に鋼索を通し、それを羅針艦橋の窓枠の上から吊り下げ、吊り下げた防弾板の下部、または上部と下部の両方を他の防弾板と一緒に固定します。

また、「峯風型の防弾板」で紹介している島風のように、ボルトで直接防弾板を装着している艦もありますが、現時点でその装着方法が見られるのは島風のみです。
ボルトの使用自体は、他の艦でも見られるのですが、多くは防弾板と防弾板を繋ぎ止めるのに使用しています。

参考文献・参考資料
・(1998)『陽炎型駆逐艦』「メカニックス」学研パブリッシング.
・遠藤昭(1998)『戦前船舶』「日本軍艦の時代考証」戦前船舶研究会.

当サイトについて

ここでは、支那事変時(昭和12年7月7日~16年12月8日)の駆逐艦について、防弾装置中心にまとめています。
目標としては、できるだけ多くの艦の防弾装置の装備状況を把握し、それらを体系的にまとめることを目指しています。

まず、防弾板の装着について、前提としては「各艦は基本的に防弾板を装備していない」こととし、写真や航泊日誌等にて装着が確認できた場合のみ、防弾板の装着ありと判断しています。
なぜかというと、駆逐艦は中国方面へ進出後、常に防弾板を装着しているわけではないということと、同じ駆逐隊であっても、装着している艦とそうでない艦があるため、「第◯駆逐隊▢▢がこの時防弾板を着けていたから、同じ駆逐隊の△△も同じように防弾板を着けていただろう」というように推測することができず、防弾板を装着した駆逐艦をまとめる上で少しでも確実性を期するため、このようにしました。

支那事変中に装備した防弾板は、基本的にはすぐ取り外し可能な仮設のもので、日によって防弾板の位置が異なることもあるため、「支那事変中こういった姿で行動していたこともあった」という一時的な姿であることを念頭に読んで頂ければと思います。

また、防弾板は基本的に写真から判定していくことになりますが、はっきりと防弾板と分かる写真はそう多くはありません。
そこで、当サイトでは下記の基準を設けて、防弾板かどうかを判断しています。

1.文書史料にて確認できている装着個所に、板状のものが確認できた場合
2.防弾板が装着されている事例が確認できている個所に、本来そこにはない板状のものが確認できた場合
3.板状のものが索具で固定(または懸垂)されているか
※板状かどうか確認できない場合はシルエットや形状での判断も可(例:樅型、睦月型の砲座や朝潮型の羅針艦橋の防弾板)

なお、舷側手すりに立てかけて装着している防弾板については、装着場所が安定せず、すべての装着個所を把握することは不可能です。
そのため、より枚数が多い方や装着個所として指定されているところを主な装着個所として図示するものの、装着個所としては「舷側」でひとまとめにしています。

まだ研究中のため、内容は確認できたものから随時更新していきます。